はじめに
「ある日突然、家族の介護が始まった」「何から手をつければいいのか、まったく分からない」——もし今、そんな不安の真っただ中にいるなら、どうか少しだけ肩の力を抜いてください。
はじめまして。介護老人保健施設で働く現役理学療法士、タカと申します。現場では、介護が始まったばかりのご家族と多く接してきました。みなさん最初は同じように「何から…」と戸惑っています。でも大丈夫。迷うのは当然です。最初はだれでも迷います。順番に一つずつやっていけば、必ず道は見えてきます。
この記事では、在宅介護が始まったときに最初にやることを、5つのステップにまとめてやさしく紹介します。読み終わるころには、「まず何をすればいいか」がはっきりしているはずです。
まず深呼吸。ひとりで全部やろうとしなくて大丈夫
介護はマラソンです。最初から全力で走ると、必ず息切れします。
そして、大事なことを一つだけ先にお伝えします。介護は、あなたひとりで背負うものではありません。日本には介護を支える仕組み(介護保険)があり、相談できる専門家がいます。これから紹介する「最初の一歩」は、その頼れる仕組みにつながるための行動です。
これから紹介する5つは、ぜんぶ「頼れる仕組み」につながるための一歩です。完璧にやろうとしなくて大丈夫。一つずつでいきましょう。
在宅介護で最初にやること【5ステップ】
① まず「地域包括支援センター」に相談する
何よりも先に、お住まいの地域にある「地域包括支援センター」に相談してください。
地域包括支援センターは、いわば“介護の相談窓口”。おおむね中学校区に1つを目安に設置されていて、介護保険にくわしい職員(保健師・社会福祉士・ケアマネジャーなど)がいます。「何から始めればいいか分からない」という段階のまま、丸ごと相談に乗ってくれます。
市区町村の役所(介護保険の窓口)に相談してもかまいません。ただ、迷うなら、まず地域包括支援センターがおすすめです。介護保険にくわしい職員がそろっているぶん、申請から介護のスタートまでがスムーズに進みやすいからです。
まずは電話で「介護が必要になったので相談したい」と伝えるだけで大丈夫です。「(お住まいの市町村名) 地域包括支援センター」で検索すれば、近くの窓口が見つかります。
介護保険を使わないまま暮らしていた、あるご夫婦のお話です。年齢を重ねるうちに少しずつ体が動きにくくなり、家の中の生活もだんだん回らなくなって、体調まで崩れていきました。そこで思い切って介護の相談をしたところ、ヘルパーさんや訪問看護が家に来てくれるサービス、福祉用具、デイサービスなどを使えるように。暮らしがぐっと立て直せたんです。「もっと早く相談すればよかった」——現場では、そんな声を本当によく聞きます。
② 要介護認定を申請する
介護保険のサービス(デイサービス、福祉用具のレンタル、ヘルパーなど)を使うには、「要介護認定」という“どのくらい介護が必要かを判定してもらう手続き”が必要です。
この申請は、市区町村の役所に出します。とはいえ、①で地域包括支援センターに相談すれば、申請の案内や代行までしてくれることが多いので、身構えなくて大丈夫です。
認定が出るまでには少し時間がかかります(通常1か月ほど)。なので「介護が必要かも」と思ったら、早めに動いておくのがコツです。
③ ケアマネジャーを決める
ケアマネジャー(介護支援専門員)は、介護生活の“伴走者”。どんなサービスをどう組み合わせるか(ケアプラン)を一緒に考えて、手配してくれる専門家です。費用は介護保険でまかなわれ、今のところ利用者の負担はありません。
ケアマネ選びは、認定の結果を待つ必要はありません。むしろ、申請と並行して早めに決めて、結果が出る前から段取りを相談しておくと、介護のスタートがスムーズです。
担当するケアマネは、要介護か要支援かで所属が少し変わりますが(要介護は「居宅介護支援事業所」、要支援は「地域包括支援センター」やその委託先など)、難しく考えなくて大丈夫。①で相談した地域包括支援センターが、あなたに合うケアマネを案内してくれます。
④ 家の中の安全をチェックする
ここは、理学療法士の私がいちばんお伝えしたいところです。
介護が始まったら、家の中の“転びやすい場所”を見直してください。高齢者の転倒は、骨折から寝たきりへ進む大きなきっかけになります。そして実は、転倒が多いのは外より家の中なのです。
特にチェックしたいのは、次のような場所です。
- 段差(玄関・敷居・部屋の境目)
- 滑りやすい床(お風呂・廊下)
- 暗い通り道(とくに寝室からトイレ)
- つかまる所がない場所(トイレ・廊下・玄関)
手すりの取り付けや段差の解消、滑り止めなどは、介護保険を使って安く対応できるものもあります。
足腰の筋力が落ちて、歩くときにフラついてしまう方がいました。手すりのない4mほどの廊下を渡るのに、なんと5分もかかっていたんです。そこで、床に置くタイプ(据え置き型)の手すりを設置したところ、ふらつきが減り、移動も1分ほどに。ご本人も「楽になった」と言ってくれました。手すりが一本あるだけで、廊下が“支えのある道”に変わります。歩く安心感が、まるで違ってくるんです。
環境を整えても転倒をゼロにはできませんが、リスクを減らすことに役立ちます。
⑤ 抱え込まない仕組みを作る
最後に、いちばん大事なこと。「自分ひとりで頑張らない仕組み」を、最初のうちに作っておいてください。
介護は長く続きます。最初から全部背負うと、する側が先に倒れてしまいます。デイサービスやショートステイ、ヘルパーなど、使えるサービスはどんどん使っていい。それは手抜きではなく、介護を長く続けるための“賢い選び方”です。
「できるだけ家で介護したい」——とても熱心なご家族がいました。デイケアは使っていたものの、ショートステイ(短期間の泊まり)には抵抗があったようでした。でも、接しているうちに、その方に介護疲れが出ている時期があって。私は迷わず、ショートステイを勧めました。実際に使ってみると、ご家族も自分の時間を持てて、その後の介護にも少し余裕が出たように感じました。
やりがちだけど、気をつけたいこと
介護を始めたばかりのご家族が、つい陥りがちなことがあります。
- 完璧を目指してしまう(「全部きちんと」は長続きしません)
- 全部自分でやろうとする(共倒れの一番の原因です)
- 相談が遅れる(早く相談するほど、ラクになります)
どれも、まじめで優しい人ほど陥りやすいものです。でも、「頼ること」は、立派な介護の技術のひとつです。
体を痛めない介助も、最初に知っておくと安心
在宅介護が始まると、立ち上がりやトイレ、ベッドの乗り移りなど、体を支える場面が一気に増えます。このとき、力まかせに介助すると、介護する側が腰を痛めてしまいます。
理学療法士として断言しますが、介助は「力」より「コツ」です。最初に正しい体の使い方を知っておくと、あなたの体を守りながら介護を続けられます。
くわしいやり方と注意点は、こちらの記事で紹介しています。
→ 介護で腰を痛めにくい体の使い方|理学療法士が教える5つのコツ
まとめ
在宅介護が始まったら、まずはこの5つを。
① 地域包括支援センターに相談する(迷わず、まずここ)
② 要介護認定を申請する(役所へ。早めに)
③ ケアマネジャーを決める(介護の伴走者)
④ 家の中の安全をチェックする(転倒リスクを減らす)
⑤ 抱え込まない仕組みを作る(サービスを使う)
全部を一度にやろうとしなくて大丈夫。まずは①の電話一本からです。そこから先は、専門家が一緒に道を作ってくれます。
あなたが倒れないことが、介護される方にとっても一番の安心です。どうか、ひとりで抱え込まないでくださいね。
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