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はじめに
親の介護を始めてから、こんなことはありませんか。
朝起きても腰が重い。夜中に何度も目が覚めて、ぐっすり眠れない。気づけば自分のことは後回しで、ささいなことにイライラしてしまう。
こんにちは。介護老人保健施設で働く、現役理学療法士のタカです。施設だけでなく、訪問リハビリで多くのご家庭にもうかがってきました。
その中で、私はあることに気づきました。
介護疲れは、心が「つらい」と気づくより先に、体に出るのです。
この記事では、介護疲れが体に出るサインのセルフチェックと、あなたの体を守る具体的な対策を5つ、お伝えします。むずかしいことはありません。今日から少しずつできることばかりです。
あなたは大丈夫? 介護疲れの体のサイン・セルフチェック
まず、あなたの体が今どんな状態か、見てみましょう。次の項目をチェックしてみてください。
☑ 寝つけない、または夜中に何度も目が覚める
☑ 食欲がない、または食事が適当になっている
☑ 気づいたら体重が減っている
☑ 休んでも、疲れが抜けない
☑ ささいなことでイライラする
いくつ当てはまったでしょうか。
3つ以上あるなら、体はかなり無理をしているサインかもしれません。「まだ大丈夫」と思っているときほど、要注意です。
以前、こんなご家族がいました。「自分は元気だから平気」と、ずっとひとりで介護を続けていた方です。でも、ある日とうとう腰を痛めてしまい、しばらく介護そのものができなくなってしまいました。
倒れてからでは、遅いのです。だからこそ、サインに早く気づいて、手を打ってほしいと思います。
なぜ、介護疲れは「体」に先に出るのか
「介護がつらい」と聞くと、多くの人は心の問題だと思います。気持ちが落ち込む、イライラする、笑顔になれない。もちろん、それも介護疲れの大事なサインです。
でも、私が現場で見てきた順番は、少し違います。
心が悲鳴をあげるより先に、体のほうが先に限界を伝えてくることが多いのです。
なぜでしょうか。介護は、思っている以上に体を使うからです。重い体を支える、ベッドの上で何度も体勢を変える、夜中に起こされる。こうした負担が毎日少しずつ積み重なり、腰や肩、睡眠といった「体」に、まず現れます。
ケアマネジャーさんや相談員さんは、限られた時間の中で、たくさんのご家庭を支えています。いっぽう訪問リハビリの私は、同じお宅へ毎週のようにうかがいます。だからこそ、ご家族の小さな変化に気づきやすい立場にいました。
最初はお元気だったご家族が、月日が経つにつれて、顔色がさえなくなる。腰をかばうしぐさ、ため息の増え方、冴えない表情。「お変わりないですか」と聞くと、決まって「大丈夫です」と笑う。でも、体は正直でした。
ご本人は「自分は平気」と思っています。でも、体はとっくにSOSを出している。これが介護疲れの、こわいところなんです。
タカ体を守る5つの対策
ここからが本題です。介護疲れから体を守るために、今日からできる対策を5つ、お伝えします。全部を完璧にやる必要はありません。できそうなものから、ひとつずつで大丈夫です。
対策1 ひとりで抱え込まない
いちばん大事な対策です。
まじめな人ほど、「自分がやらなければ」と全部を背負い込みます。でも、介護は長距離走です。ひとりで全力疾走を続ければ、いつか必ず息切れします。
以前、訪問リハビリでうかがっていた、娘さんがおひとりで介護するお宅がありました。とても真面目で、親思いの方でした。「できるだけ希望をかなえて、家で過ごさせてあげたい」と、何でもご自分で抱えていました。
でも、その真面目さゆえに、少しずつ介護疲れが見え始めます。気づけば、親御さんへの口調も強くなっていました。
そこで私は、ショートステイを提案しました。「少し、ご自分の時間をつくりませんか」と。ケアマネジャーさんにもつなぎ、ショートステイを使い始めると、娘さんに自分の時間が戻ってきました。表情がやわらぎ、介護疲れも少しずつ軽くなっていったのです。
頼れる先は、ちゃんとあります。
● 地域包括支援センター
介護のよろず相談窓口です。どこに相談していいか分からないときは、まずここへ。お住まいの市区町村に必ずあります。
● ケアマネジャー
すでに介護保険を使っているなら、担当のケアマネさんに「疲れている」と正直に伝えてください。サービスの組み直しを一緒に考えてくれます。
● ショートステイ・デイサービス
数日〜日中だけ施設で過ごしてもらう間、あなたは休めます。「預けるなんて申し訳ない」と思う必要はありません。
サービスを使うのは、甘えではありません。私は現場で、無理をしすぎるご家族に、何度も「少し休憩しませんか」「もっと頼っていいんですよ」と声をかけてきました。あなたが休むことは、介護を続けるための大切な準備なのです。
タカ対策2 睡眠時間を削らない
睡眠は、体の回復の土台です。ここを削ると、疲れは雪だるま式に増えていきます。
夜間に介護が必要で、どうしても眠れない場合は、対策1のショートステイなどで「まとめて眠る日」をつくることも考えてみてください。
昼間に15分でも横になれるなら、それだけでも体は少し楽になることが多いです。完璧な睡眠をめざすより、「少しでも休む」を積み重ねましょう。
対策3 食事は「手を抜く」勇気を
毎日の食事づくりは、介護の中でも特に大きな負担です。自分の親に、ちゃんとしたものを食べさせたい。その気持ちは、とても大切です。
でも、その「ちゃんと」が、あなたのストレスになっていませんか。
そんなときは、配食サービスに頼るのも、立派な選択です。栄養バランスの整った食事が、家まで届きます。やわらかさを調整したものや、塩分をおさえたものなど、高齢の方向けのメニューもそろっています。
「手を抜く」のではなく、「頼って、余った力を別のことに使う」と考えてみてください。食事づくりの時間と気力が浮けば、その分、あなたの体は休まります。
たとえば、次のようなサービスがあります。お住まいの地域で使える方を選んでみてください。
◆ ワタミの宅食ダイレクト(全国対応・冷凍のお惣菜で手軽に)
◆ SOMPOケア「食楽膳」(やわらかさ・飲み込みに配慮した冷凍のお惣菜)
迷ったら、まずは手軽に始めやすい「ワタミの宅食ダイレクト」、やわらかさや飲み込みへの配慮を重視するなら「食楽膳」——を目安に選んでみてください。
対策4 介護の合間にできる「自分の体」の30秒セルフケア
介護をしていると、自分の体をいたわる時間は、なかなか取れませんよね。
でも、特別な運動の時間は要りません。介護の合間に、自分の体を「ゆるめる」だけ。1回数十秒でできることばかりです。
<腰をゆるめる>
① 壁に手をついて、背中をゆっくりまるめたり、反らしたり。猫が伸びをするイメージで、10回ほど。固まった腰まわりの筋肉がほぐれやすくなります。
② 両手を組んで頭の上へ伸ばし、そのまま体を左右にゆっくり倒す。左右20秒ずつ。わき腹から腰の筋肉が伸びて、こわばりがやわらぎます。
介護は前かがみの姿勢が多く、腰の筋肉が固まりがちです。こまめに伸ばして、こわばりをやわらげましょう。
<肩をゆるめる>
① 肩を耳に近づけるようにグッとすくめて5秒、そしてストンと落とす。力を入れて抜く落差で、こりがゆるみやすくなります。3〜5回。
② 肩を大きく前に回し、次に後ろに回す。各5回。肩甲骨が動いて、上半身が軽くなることが多いです。
<深呼吸でゆるめる>
介助のあとや、イライラしたときに。鼻からゆっくり3秒かけて吸い、おなかをふくらませます。次に、口から6秒かけて、細く長く吐ききります。これを3回くり返すだけです。
吸うことより、「長く吐く」ことを意識するのがコツ。吐く息に気持ちを向けると、高ぶった気持ちも落ち着きやすくなります。
ポイントは、「気づいたときにやる」こと。1回数十秒なら、続けられます。
タカなお、介助のときの「体の使い方」そのものを変えると、腰への負担はぐっと減ります。そのコツは別の記事でくわしく紹介しているので、あわせて読んでみてください。
→ 介護で腰を痛めにくい体の使い方
対策5 痛み・しびれ・不眠が続くなら、早めに受診を
最後に、これだけは覚えておいてください。
ケアマネジャーさんに相談したり、セルフケアをしたりで楽になることも多いと思います。それでも痛み・しびれ・眠れない状態が続くときは、無理をせず、病院を受診して医師に相談してください。
腰の痛みやしびれの中には、休息だけでは良くならないものもあります。「介護で疲れているだけ」と自己判断せず、早めに受診することが、結局はいちばんの近道です。
あなたの体は、ひとつしかありません。大事にしてください。
まとめ|あなたが元気でいることが、いちばんの介護
タカ最後に、今日のポイントをふり返ります。
介護疲れは、心より先に「体」に出ます。朝起きた時の腰や肩のだるさ、眠れない夜、減っていく体重など。それは、体からのSOSです。だからこそ、5つの対策で、自分の体を守ってください。
1. ひとりで抱え込まない
2. 睡眠を削らない
3. 食事は頼っていい
4. 合間にセルフケアをする
5. つらい不調が続くなら受診を
介護は、がんばりすぎなくていいんです。頼っていいんです。だから、頼りましょうよ。
あなたが笑顔で、元気でいること。それが、介護される方にとって、いちばんの安心です。あなたが倒れないことが、いちばんの介護なのです。どうか、自分の体も、大切にしてくださいね。


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