高齢者のむせ込み予防|嚥下体操・口腔体操の簡単なやり方

介護予防

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はじめに

食事のたびに、ご家族がむせていませんか。

「最近、お茶を飲むだけでむせるようになった」「食事の途中でよく咳き込む」。そんな様子が増えてくると、見ているこちらも心配になりますよね。

こんにちは。介護老人保健施設で働く現役理学療法士のタカです。

むせ込みは、ただの「むせ」ではありません。高齢者だと、のどやお口の力が少しずつ弱ってきたサインのことがあります。でも、あまり深刻に考えすぎないでください。その力は、毎日のかんたんな体操で保ちやすくなります。

この記事では、自宅で、道具もいらず、5分でできる「むせ込み予防の体操」を、のどとお口に分けて、順番にお伝えします。今日から一緒に始めてみましょう。

⚠️ 安全のために
持病のある方、飲み込みや痛みに不安のある方は、始める前にかかりつけの医師に相談してください。体操中にむせ込みや息苦しさが出たら、すぐにやめてください。

なぜ高齢者にむせ込み予防の体操が必要なの?

私たちは、ふだん食べ物を飲み込むとき、のどや舌の筋肉を無意識に使っています。ほんの一瞬で、食べ物を食道へ送り、気管にはフタをする。とても精密な動きです。

ところが、この力は年齢とともに少しずつ落ちていきます。のどの筋肉が弱る。飲み込みのタイミングを合わせる反射が遅れる。すると、食べ物や飲み物が気管の方へ入りかけて、体が「出そう」として咳き込む。これがむせ込みです。

つまり、むせ込みは「のどとお口の筋力の衰え」が関わっていることが多いのです。

ここで大事なのは、のどやお口の筋肉も、体と同じで「使えば保てる」ということ。

私の勤める施設でも、毎食の前に、みんなで嚥下・口腔体操をしています。一生懸命に取り組んでいる方ほど、食事のときにむせ込むことが少ないように感じます。

理学療法士タカタカ
特別なことじゃないんです。のどの筋肉も、使えばちゃんと応えてくれますよ。

飲み込みは、毎日の積み重ねです。だからこそ、かんたんな体操を習慣にする意味があります。

(※「なぜむせるのか」「危ないサインの見分け方」をくわしく知りたい方は、別記事「高齢者がむせる原因と危ないサインの見分け方」もあわせてどうぞ。)

のどの体操(嚥下体操)のやり方 ― 首・肩・深呼吸

(「嚥下(えんげ)」とは、飲み込みのことです。)

まずは、のどまわりをほぐす準備運動から。食事の前にやると、飲み込みの動きがスムーズになりやすいです。

① 深呼吸
鼻から吸って、口からゆっくり吐きます。2〜3回。体の力を抜いて、リラックスするのが目的です。

高齢者の嚥下体操 鼻から息を吸うタカ

鼻から吸う

高齢者の嚥下体操 口からゆっくり息を吐くタカ

口からゆっくり吐く

② 首をゆっくり動かす
のどの筋肉をやさしく伸ばします。

・首を左右にゆっくり傾ける(2〜3往復)
・顔を左右にゆっくり向ける(2〜3往復)
・首をぐるっとゆっくり回す(各3回)

高齢者の嚥下体操 首を左右に傾けるタカ

左右に傾ける

高齢者の嚥下体操 顔を左右に向けるタカ

左右に向く

高齢者の嚥下体操 首をぐるっと回すタカ

ぐるっと回す

※写真は片側の例です。反対側も同じように行いましょう。どれもゆっくりが基本。痛みが出る方は無理をしないでください。

③ 肩の上げ下げ
肩をすっと上げて、ストンと落とす。2〜3回。肩からのどにかけての緊張をゆるめます。

高齢者の嚥下体操 肩をすっと上げるタカ

すっと上げてストンと落とす

④ 声を出す(あー)
「あー」と、のばして声を出します。声を出すことも、のどの立派な運動です。

高齢者の嚥下体操 あーと声を出すタカ

「あー」と声を伸ばす

どれも、痛くない範囲でゆっくりが基本です。

お口の体操(口腔体操)のやり方 ― 舌・頬・唾液腺マッサージ

のどがほぐれたら、次はお口です。舌や頬を動かすと、食べ物をまとめて飲み込む力や、唾液が出やすくなります。

① 口を大きく開ける
「あー」と、口を大きく開けます。次に、キュッと閉じる。開ける・閉じるをくり返します。

高齢者の口腔体操 口を大きく開けるタカ

大きく開ける

高齢者の口腔体操 口をキュッと閉じるタカ

キュッと閉じる

② ほっぺたをふくらませる
口を閉じて、両方のほっぺたを風船のようにふくらませます。次にへこませる。頬の筋肉を動かします。

高齢者の口腔体操 ほっぺたをふくらませるタカ

ふくらませる

高齢者の口腔体操 ほっぺたをへこませるタカ

へこませる

③ 舌を動かす
舌をまっすぐ前に出す、引っ込める。左右の口角にもつけてみましょう。舌は飲み込みの主役です。

高齢者の口腔体操 舌をまっすぐ前に出すタカ

舌をまっすぐ前に出す

④ 唾液腺マッサージ
唾液(つば)が出やすくなると、飲み込みがラクになります。指先で、耳の下から、あごの下のやわらかい部分を、やさしくなでるようにマッサージします。強く押さず、痛みを感じたらやめてください。

高齢者の口腔体操 唾液腺マッサージをするタカ

耳の下〜あごの下をやさしく

パ・タ・カ・ラ発声もおすすめ
「パ・タ・カ・ラ」と声に出すのも、お口とのどの体操になります。それぞれ動かす場所が違います(下の表は目安です)。

動き 何にいい?
くちびるを閉じて開く 食べ物をこぼさない力
舌先を上の歯ぐきにつける 食べ物を送り込む力
のどの奥で止める 飲み込むときフタをする力
舌を丸めて上あごにつける 食べ物をまとめる力

「パ・パ・パ・パ」と、まずはゆっくり1音ずつ。慣れてきたら、少し速く言ってみます。最後に「パタカラ・パタカラ・パタカラ」と続けて。速くしても、口をはっきり動かすことを忘れずに。

理学療法士タカタカ
早口言葉みたいで、ちょっと楽しいですよ。ぜひ声に出してみてください。

楽しく続けるコツ

体操は、一度にたくさんより、毎日少しずつ続ける方が力になります。無理なく習慣にするコツを4つ。

食事の前に5分:飲み込みの準備運動になり、食事のむせ込み予防に役立ちます。「いただきます」の前の合図に。
毎日、決まった時間に:朝ごはんの前など、タイミングを決めると忘れにくいです。
楽しくやる:数を数えたり、好きな歌を歌ったりしながらでもOK。声を出すこと自体が運動です。笑顔でやると続きます。
紙に書いて貼る:手順を紙に書いて、食卓の見える場所に貼っておくと、ご本人だけでも取り組みやすくなります。

一人でやるのが難しいときは、ご家族が「せーの」と声をかけて、一緒にやってあげてください。それだけで、ぐっと続けやすくなります。

体操だけで心配なときは(食事の工夫と相談先)

体操を続けても、むせ込みが気になるとき。食事の工夫も、あわせて取り入れてみましょう。

姿勢を整える:あごを軽く引いて、少し前かがみの姿勢が飲み込みやすいです。あごが上を向くと、むせやすくなります。
一口を小さく、ゆっくり:急がず、口の中のものを飲み込んでから次の一口へ。
飲み込みやすい形に:さらさらの水分はむせやすいので、とろみをつける。食材はやわらかく、まとまりやすく調理する。

とはいえ、毎日の食事でやわらかい食事やとろみのある食事を用意し続けるのは、大変です。

そんなときは、やわらか食やムース食に対応した宅配食(配食サービス)を頼るのも一つの手です。飲み込みに配慮した食事が届くので、負担が軽くなることもあります。

◆ メディカルフードサービス「健康宅配食」(やわらか食・ムース食など、噛む力・飲み込みに配慮したコースもある宅配食)

お試しプランが用意されていることもあるので、まずは気軽にのぞいてみるのもいいと思います。

そして、むせ込みが急に増えた・熱が出た・体重が減ってきた——こうしたときは、体操や食事の工夫だけで様子を見ず、かかりつけの医師や、飲み込みの専門家(言語聴覚士)、ケアマネジャーに相談してください。飲み込みの問題は、早めの対応が肝心です。

まとめ

理学療法士タカタカ
飲み込む力は、少しずつでも保てます。あせらず、今日から一緒に始めていきましょう。

むせ込みの予防について、お伝えしてきました。ポイントをおさらいします。

1. むせ込みは、のどとお口の力の衰えが関わっていることが多いです
2. その力は、毎日のかんたんな体操で保ちやすくなります
3. のどの体操(深呼吸・首・肩・発声)で準備運動を
4. お口の体操(口・頬・舌・唾液腺マッサージ・パタカラ)で飲み込む力を
5. 食事の前に5分、毎日、楽しく続けるのがコツ
6. 体操だけで心配なときは、食事の工夫や、医師・専門家への相談を

いちばん伝えたいこと
むせ込みは、少しの体操で予防に役立てられます。大切な人と、これからも食事の時間を安心して楽しめますように。

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