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はじめに
「最近、親の足腰が弱ってきた気がする。でも、立って運動するのは転びそうで心配」
「どんな運動をすすめたらいいのか分からない」
そんなふうに感じて、この記事にたどり着いたご家族も多いのではないでしょうか。
歳をとると、少し動いただけで疲れる。ふらついて転ぶのが怖い。かといって何もしないと、足腰はますます弱っていく。ご本人にとっても、支えるご家族にとっても、共通の心配ごとです。
こんにちは。介護老人保健施設で働く現役理学療法士のタカです。
そんなときにおすすめしたいのが、椅子に座ったままできる体操です。座って行えば、転ぶ心配がありません。それでいて、足腰の筋肉はしっかり動かせます。ご家族が横で数を数えてあげると、ご本人も続けやすくなります。
この記事では、椅子とタオルがあれば自宅でできる、座ってできる体操を順番にお伝えします。道具はほとんどいりません。今日から、ご家族と一緒に少しずつ始めてみましょう。
持病のある方、痛みや息切れに不安のある方は、始める前にかかりつけの医師に相談してください。体操中に痛み・息苦しさ・強いふらつきが出たら、すぐにやめてください。
なぜ「座ってできる体操」がいいの?
座ってできる体操のいちばんの利点は、転ぶ心配がないことです。
立って行う運動は、たしかに効果があります。でも、足腰が弱ってきた方にとっては、片足立ちやスクワットは転倒のリスクと隣り合わせです。「運動しようとして転んでケガをした」では、元も子もありません。
その点、椅子に座って行えば、バランスを崩しても倒れません。安心して、体を動かせます。
もうひとつの利点は、運動の「はじめの一歩」にちょうどいいことです。
これまで運動の習慣がなかった方が、いきなり立って歩く運動から始めるのは、体にも気持ちにも負担が大きいものです。座ってできる体操なら、転ぶ心配がなく、テレビを見ながらでも始められます。まずはここから、体を動かすことに慣れていきましょう。
リハビリの現場でも、いきなり立つ運動がむずかしい方には、まず座ってできる運動から始めてもらいます。それを続けて、体を動かすことに慣れ、力がついてきたら、立ってできる運動や歩く練習へと、少しずつ広げていきます。
座ってできる体操は、その土台づくりです。ここで運動が習慣になれば、「立ってやってみようかな」という次の一歩が、ぐっと踏み出しやすくなります。立ってできる運動に興味が出てきたら、別記事「高齢者の転倒予防体操」もあわせてどうぞ。
タカ大切なのは、強い運動を一度きりやることではありません。かんたんな体操を、毎日少しずつ続けること。そして、慣れてきたら次のステップへ。座ってできる体操は、その出発点にぴったりです。
椅子でできる体操 ― 足腰を動かす5つの運動
ここからは、体操をするご本人に向けてお伝えします。ご家族は、一緒に読みながら声をかけてあげてください。
まずは、道具のいらない基本の運動から。椅子に深く座り、背すじを軽く伸ばして始めましょう。回数は運動によって変わるので、一つずつお伝えします。どれも、無理のない範囲で大丈夫です。
① 足踏み
座ったまま、太ももを交互に持ち上げます。その場で足踏みをするイメージです。腕も一緒に振ると、上半身も一緒に動かせます。目安は20回。
太ももを上げて足踏み(左右交互に)
② 膝伸ばし
片方の膝をゆっくり伸ばして、つま先を上に向けます。太ももの前側に力が入るのを感じながら、2〜3秒キープして、ゆっくり戻します。左右交互に。太ももの前は、立ち上がりや歩くときに使う大事な筋肉です。目安は左右各10回。
膝を前に伸ばし、つま先を上に
③ かかと上げ
両足の裏を床につけたまま、かかとだけをゆっくり上げます。両足同時に、つま先立ちのような動きです。ふくらはぎを動かすので、足がむくみやすい方にもおすすめです。目安は10回。
両かかとをそろえて上げる
④ つま先上げ
今度は逆に、かかとを床につけたまま、両足のつま先を同時に持ち上げます。すねの前側の筋肉を使います。この筋肉が弱ると、歩くときにつま先が上がらず、つまずきやすくなります。地味ですが、つまずきの予防にもつながる大切な運動です。目安は20回。
両つま先をそろえて上げる
⑤ 足首まわし
片方の膝を伸ばし、足をなるべくまっすぐにした状態で、足首をぐるぐると回します。膝を伸ばしきるのがきつい方は、軽く前に出す程度でかまいません。右回り・左回りを10回ずつ。足首がやわらかく動くと、歩くときの地面の蹴り出しや、バランスの立て直しがしやすくなります。
足首をぐるぐる(右回り・左回り各10回)
この5つを続けるだけでも、足腰にはじゅうぶんな運動になります。慣れてきたら、回数を増やしたり、くり返し行ってみてください。
慣れてきたら「重り」でステップアップ
自重の運動に慣れて、「もう少し手ごたえがほしい」と感じてきたら、足首に軽い重りをつけてみるのもおすすめです。
使いやすいのは、ベルクロ(マジックテープ)で足首に巻きつけるタイプの重り(アンクルウェイト)です。着け外しがかんたんで、ずれにくく、自分の体格に合わせて位置を調整できます。
ただし、重りは「慣れてきたら」でじゅうぶんです。いきなり重いものを使うと、関節を痛めたり、途中でやめてしまう原因になります。まずは軽いもの(片足0.5kg程度)から。膝や足首に痛みが出たら、すぐに外してください。
タカタオルでできる体操 ― 肩・背中・体幹をほぐす
足腰の運動のあとは、上半身も動かしておきましょう。ここで役立つのが、1枚のタオルです。フェイスタオルくらいの長さがちょうどいいです。
① バンザイ伸ばし
タオルの両端を持ち、腕を伸ばしたまま、両手を頭の上へゆっくり上げます。バンザイの姿勢です。肩や背中がぐーっと伸びるのを感じてください。猫背になりがちな姿勢が、すっと伸びます。目安は5回。
胸の前で構える
頭の上へ上げる
② 首の後ろで引き合い
タオルを首の後ろに回し、両端を持って、左右に軽く引き合います。胸を開いて、背すじを伸ばすイメージです。長時間座っていて丸まった背中が、気持ちよく伸びます。目安は5回。
首の後ろで左右に引き合う
③ 体ひねり
タオルを両手で持って腕を伸ばし、胸の前に構えます。そのまま、上半身をゆっくり左右にひねります。腕だけを動かすのではなく、おなかから背中をねじるイメージで。体幹(おなかまわり)を動かすと、座った姿勢が安定しやすくなります。目安は左右各5回。
上半身を左右にひねる
タオル体操は、力の弱い方でも取り組みやすいのが良いところです。タオルがピンと張る手ごたえが、運動している感覚を教えてくれます。
タカ楽しく続けるコツ
体操は、一度にたくさんやることよりも、毎日少しずつ続けることが大切です。
続けるコツは、「生活の中に組み込む」こと。たとえば、朝ごはんの前、テレビの決まった番組を見ながら、お風呂上がりのひと休みに──と、すでにある習慣にくっつけると、忘れにくくなります。
「全部やらなきゃ」と気負う必要もありません。今日は足踏みとかかと上げだけ、という日があってもいいのです。細くても長く続けるほうが、まとめて頑張って三日坊主になるより、ずっと体のためになります。
ご家族が一緒に「1、2、3」と声をかけたり、数を数えたりするのもおすすめです。ひとりで黙々とやるより、ずっと楽しく続けられます。
タカこの記事の8つの体操を、番号・イラスト・回数つきで1枚にまとめました。印刷して壁に貼れば、見るたびに体を動かすきっかけになります。
体操だけで心配なときは
座ってできる体操は、足腰を保つのにとても役立ちます。でも、体操だけでは心配な場面もあります。
たとえば、次のようなときは、一度かかりつけの医師や、担当のケアマネージャーに相談してください。
・体操をしていて、膝や腰などに痛みが続く
・立ち上がりや歩行が、以前よりはっきり不安定になってきた
・食事のときにむせることが増えてきた
こうしたサインは、体からの「早めに見てほしい」という合図のことがあります。無理に運動で解決しようとせず、専門家の目でみてもらうのが安心です。
飲み込みの力が気になる方は、のどとお口の体操をまとめた別記事「高齢者のむせ込み予防|嚥下体操・口腔体操の簡単なやり方」もあわせてどうぞ。立って行う転倒予防の体操を知りたい方は「高齢者の転倒予防体操」も参考になります。
まとめ
座ってできる体操は、転ぶ心配がなく、足腰を動かせる、続けやすい運動です。
1. 椅子でできる足腰の運動は5つ(足踏み・膝伸ばし・かかと上げ・つま先上げ・足首まわし)
2. 慣れてきたら、足首の軽い重りでステップアップ
3. タオルがあれば、肩・背中・体幹もほぐせます
4. 大事なのは、完璧にやることより、毎日少しずつ続けること
5. 体を動かすことに慣れてきたら、立ってできる運動へ少しずつ広げていきましょう
座ってできる体操は、無理なく続けられる「はじめの一歩」です。ご家族と一緒に、今日から少しずつ始めてみませんか。続けたその先に、「なんだか動きが軽くなった」と感じられる日が、きっと待っています。


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